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文献詳細

雑誌文献

精神医学23巻1号

1981年01月発行

巻頭言

精神医学と性格学

著者: 切替辰哉1

所属機関: 1岩手医科大学神経精神科学教室

ページ範囲:P.2 - P.3

文献概要

 初めて,本格的に,「精神疾患の性格因」の研究がなされたのは,クレッチマーの『敏感関係妄想』(1918)においてであった。『敏感関係妄想』は,多次元診断に基づく構造分析から,性格と体験と環境の相互関連によって,敏感関係妄想が発病するという先駆的な視点に立つ金字塔的な業績であった。この業績は後に,性格と状況の相互関連によって,うつ病が発病するというテレンバッハの『メランコリー』(1961)に強い影響を及ぼした。『敏感関係妄想』の副題に「パラノイア問題と精神医学的性格学研究」とあるが,『敏感関係妄想』は,精神医学と性格学すなわち精神医学における性格学研究の大きな意義と価値を見事に示して呉れたものである。
 『敏感関係妄想』でクレッチマーは,「精神医学的性格学研究」の章を設けて,力動的性格論を展開している。さらに,ヴォルフガング・クレッチマーは,『敏感関係妄想』(第4版)の第12章『敏感関係妄想の概念,歴史および科学的立場』で,父エルンストの力動的性格論を強調している。「性格論の最も深い,最も広い視点はその力動的把握にある。すなわち,第一に,性格は周囲と持続的な相互関係にあり,この関係からのみ決定される。第二に,性格は変容しうるものであり,しかも常に変容している。その背後には力動的な心の概念がある。心については,次々に新たに生ずる外界刺激に対して,連続して作用を生ずる反応の絡みあった動き,時間的な動きである唯一の正しい表象様式を用いなければならない」。事実,クレッチマーは,性格の主要原理について次のように述べている。「ここで最も力を入れて論じた性格学の主要原理は次の事柄である。第一に我々は,統計学的に物質化する観察方法の代りに,実際の精神的事象に応ずるような,発生的・力動的な観察方法をとること,さらに性格を体験との生きた関連で見ること,さらに精神が純粋な精神過程を通じて反応によって獲得した狭義の性格学的性質を,内因的,生物的自然連関の一部として精神内部に生ずる性質から区別すること,そして最後になによりもまず性格特徴に対する科学的名称を比較できるように,一つの論理的な平面へ投影することである」。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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