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特別講演
抗うつ剤と多剤投与
著者: 川北幸男2
所属機関: 1Psychiatrischen Klinik der Freien Universität 2大阪市立大学医学部神経精神医学教室
ページ範囲:P.91 - P.102
文献購入ページに移動数種の薬剤を同時に投与するという多剤投与は今日では日常診療上極くありふれたことになっている1)。多剤投与の目的は,原則的には,治療効果あるいは予防効果を高めたり,それらの効果の発現を促進したり延長したり拡大することにあるが,一方副作用を弱めたり,その範囲を限定したり,副作用の持続を短くすることでもある。しかし,すべての積極的治療と同様に,この種の投薬に本質的に重要なことは,有用性と危険性の比をできるだけ,好ましくしておくことである。多剤投与の力を借りねばならない状況は種々様々であるが,それは表1に示した通りである。
多剤投与の場合に,その適応症の決め方が首をかしげさせるようなものであったり,あるいは合理性を欠く場合には,効果が現われないだけでなく,副作用を伴うものである。(極端な場合には,治療に抵抗するという症例も出てくる。)この種の問題が起こってくる原因は,1つは,用いた薬剤1つ1つの作用プロフィルについて十分な情報を持っていないこと,あるいは薬剤間の相互作用のパターンについて十分知っていないことにある。第2に,それよりもっと恐ろしいのは,患者が多剤投与を受けていることを医師が知っていない場合である。これは患者が数人の医師に治療を受けており,しかも個々の医師は他の医師がその患者に何を処方しているかを互いに適切に知らされていないこともあるし,さらに,患者が薬局から薬剤を買って服用している場合もある。
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