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文献詳細

雑誌文献

精神医学23巻10号

1981年10月発行

文献概要

特集 失行

“Apraxia of Speech”—その術語についての再検討

著者: 大東祥孝1

所属機関: 1京都第1赤十字病院精神神経科

ページ範囲:P.1041 - P.1046

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I.はじめに
 ここで筆者の論じたいことは,最近“apraxiaof speech”と称されている現象に関し,これを“失行”の枠内でとらえることが真に妥当であるか否か,換言すればかかるterrninologyで当面の現象を記載することが適当であるか否か,という問題である。紙数が限られているので具体例を挙げて詳述することは別の機会にまわし(大東36),1981),今回は主として概念上の理論的問題点をいくつか指摘しておくにとどめたい。
 “apraxia of speech”という用語は1960年代後半,Darleyを中心とするMayo学派によって,“verbal apraxia”を継承する概念として提出されたものであり(Darley10),1968),従来の構音障害dysarthriaとの鑑別,及び本来の失語aphasiaとの鑑別を主たる目的として登場してきたものであって,一般に“programming of motor speech”の障害であると定義され,最初はアメリカ中西部の言語病理学者speech pathologistによって用いられ,最近本邦においてもかなり頻繁に使用されるに至っている概念である。ちなみにDarleyは“verbal apraxia”を“apraxia of speech”とした理由について,前者の場合,書字障害をも含むかの如き印象を与えるので後者の術語が案出されたと述べている(personal communication,1979)“apraxia of speech”は一般に発語失行と訳されているようだが,“verbal apraxia”との異同を明確にするために発話失行という訳語をあてるのも一案ではないかと考えられるが,いずれにしてもこれは,本邦において大橋33)がP. Marieのアナルトリーanarthrieの訳語として用いた構音失行(1960)にほぼ相当する概念であることは大方のみとめるところである。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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