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文献詳細

雑誌文献

精神医学23巻10号

1981年10月発行

文献概要

古典紹介

Hans Berger—ヒトの脳波について—第3回

著者: 山口成良1

所属機関: 1金沢大学医学部神経精神医学教室

ページ範囲:P.1073 - P.1081

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 これらの研究結果から,頭蓋欠損の上の頭皮から,または損傷されていない頭蓋の頭皮から,そして硬膜上から導出される,上に詳細に記載された電流変動が,単に,大脳の運動の表現,または動脈,毛細管,静脈などの血管の,変化する充盈によって生じた頭皮の運動の表現であるという異議は却下しなければならないと私は信ずる。私はすでにかつて強調したごとく,そのような仮定でもっても,例えば図4と5において示したごとき,一つの心拍動内に,本質的に常に同じ大きさの変動を示す,そのような規則的曲線を決して説明できない。他方また,図7と8に再現されているそのような不規則な曲線をただ血管の充盈の変動によってのみ説明することは容易ではない。
 頭皮または硬膜上から導出された電流変動が,頭皮または大脳の血管の変化する充盈によって制約されるという仮定を論駁することでもって,勿論,Tschirjewにょって言及された,電気現象は血管壁への血液の摩擦を通しておこるという他の異議は論駁されない。確かにわれわれは,電気的変動の幾分異なった経過と,そしてまた脈拍波とのある類似を期待するかも知れない。しかし私の意見では,動物実験はそのような仮定に反対する。潟血は,イヌの脳の表面から導出された電流変動の振幅に一時的増大を生じる。同様に,両側の頸動脈の結紮は,それらの振幅に影響しない。そして最後に,図3において示されたごとく,心拍動と呼吸の停止にも拘らず,電流変動が存続することが観察されうる。丁度,Kaufmann,Cybulski,そしてPrawdicz Nerninskiのように,私はTschirjewの異議は適切でないと思う。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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