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精神分裂病の臨床診断—方法論的考察
著者: 諏訪望1
所属機関: 1埼玉医科大学神経精神科センター
ページ範囲:P.1208 - P.1223
文献購入ページに移動Ⅰ.序言
精神疾患の診断の意義については,いろいろな観点から論ずることができる。ここでは最初から問題を診断名決定という手続に限定し,これを,「医師-病者という特定の人間関係を前提とする医療の場における,医師としての立脚点ないし心構えの確立」と理解しておきたいと思う。したがって,診断名の決定ということは,医師の側からの病者への関与の基本的なあり方を意味することになる。
問題をこのように限定しても,精神疾患の診断に関しては,なおいくつかの問題点が浮かびあがる。第1は診断者の学問的立場である。つまり疾病論の体系が違えば当然異なった診断名が用いられることになるし,さらに,たとえば「単一精神病」学説の観点からは,いわゆる内因性精神病の下位概念をしめす診断名は無意味なものになる。第2は診断者の臨床経験であり,ここではJaspers, K. 1)のいう「個人的直観」persönliche Intuitionあるいは「練達」Kennerschaftが問題になる。しかしこのような要因を考慮にいれながら,なるべく普遍的で客観的な見方ができる共通の場を求めることが,科学としての精神医学の立場を確立するために要請されるわけである。
精神疾患の診断の意義については,いろいろな観点から論ずることができる。ここでは最初から問題を診断名決定という手続に限定し,これを,「医師-病者という特定の人間関係を前提とする医療の場における,医師としての立脚点ないし心構えの確立」と理解しておきたいと思う。したがって,診断名の決定ということは,医師の側からの病者への関与の基本的なあり方を意味することになる。
問題をこのように限定しても,精神疾患の診断に関しては,なおいくつかの問題点が浮かびあがる。第1は診断者の学問的立場である。つまり疾病論の体系が違えば当然異なった診断名が用いられることになるし,さらに,たとえば「単一精神病」学説の観点からは,いわゆる内因性精神病の下位概念をしめす診断名は無意味なものになる。第2は診断者の臨床経験であり,ここではJaspers, K. 1)のいう「個人的直観」persönliche Intuitionあるいは「練達」Kennerschaftが問題になる。しかしこのような要因を考慮にいれながら,なるべく普遍的で客観的な見方ができる共通の場を求めることが,科学としての精神医学の立場を確立するために要請されるわけである。
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