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文献概要

研究と報告

全生活史健忘の臨床と精神力学的考察

著者: 松木邦裕1 西園昌久1 福井敏1 野田省治1 小田一夫1

所属機関: 1福岡大学医学部精神医学教室

ページ範囲:P.1233 - P.1240

 抄録 男性にみられた心因性全生活史健忘6症例の臨床的検討と精神力学的考察を行った。
 そこでは,生活史上の問題,飲酒,遁走,発症や経過に関連しての身体反応,情動変化,対人態度など現象学的に興味ある所見が得られた。なかでも,準備因としての慢性葛藤,そして誘因としての急性葛藤の存在が認められた。また,これらの患者の情動の基底として抑うつが認められた。それは精神力学的には対象喪失不安に基づいたものであると理解される。
 心因性全生活史健忘は,これまでヒステリー性解離反応として理解されてきているが,本症者の人格構造の特徴,さらに近年の精神分析的知見からも,この理解では十分とはいえず,より未統合な人格水準に基づく病理現象と理解される。
 また,青年期症例の特徴についても壮年期症例との比較検討から考察を加えた。

掲載雑誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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