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雑誌詳細

文献概要

研究と報告

抗精神病薬による精神分裂病治療の臨床脳波学的研究—特に脳波変化と病像経過との縦断面的検討

著者: 富田邦義1

所属機関: 1順天堂大学医学部精神医学教室

ページ範囲:P.245 - P.258

 抄録 発病後未治療,再発後未治療の精神分裂病25例について入院服薬開始前より退院後3年以上にわたって脳波検査をくり返し行い,基礎波と光刺激反応の変化を臨床症状との関連において検討した。①服薬開始前記録では境界14例,軽度異常2例計16例(64.0%)で基礎律動異常が認められた。光刺激では3〜30f/s帯域で不定の駆動反応を示した。②服薬開始後は基礎波に変化の乏しいA群と明らかに変化を示すB群に分かれた。光刺激反応は反応帯域により3〜30f/s帯域で幅広い不定の反応を示すⅠ型,10〜18f/s帯域で反応のピークを示すⅡ型,3〜7f/s帯域で反応のピークを示すⅢ型の3つのタイプに分かれた。臨床経過との相関性を見るとA群,B群ともⅠ型は不変例,Ⅱ型,Ⅲ型は改善例であった。③退院後の予後との関連では,A群Ⅰ型は再発しやすく,B群Ⅱ,Ⅲ型は予後良好なものが多かった。また予後良好なものの退院後脳波所見は健常対照群に近い正常所見を示し,光刺激反応はⅡ型を示した。予後不良なものは正常所見を示すものはなく,光刺激反応はⅠ型を示した。以上の知見は分裂病者に対する薬物療法下の経過予測について,脳波検査特に光刺激反応の検討が重要な示唆を与えることを示している。

掲載雑誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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