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抄録 躁うつ病の発病状況論は,周知の如く,特有な病前性格と,その病前性格をめぐる特徴的な発病状況との間の本質的関連性の認識を基盤として発展してきた。最近の研究の動向は病前性格の発達論および発病状況の成立過程の分析へと焦点が向けられている。本論文では,躁うつ病,うつ病および躁病と診断された計60例の詳細な病歴を資料とし,発病状況のなりたちについて精神病理学的に検討を加えた。その際,とくに誘因それ自体のなりたちが多重的,発展的あるいは持続的である点に注目し,発病に至るまでの病者の生活状況とあわせて全面的かつ継続的な観点から発病状況を考察する必要があることを強調した。また,発病状況のなりたちに関して,3つの特徴ある類型,すなわち重複型,拡大型,持続型に分けて考察した。
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