icon fsr

文献詳細

雑誌文献

精神医学23巻5号

1981年05月発行

文献概要

古典紹介

Adhémar Gelb und Kurt Goldstein—色名健忘について—並びに,健忘失語一般の本性と,言語と外界への行動との間の関係についての研究—第3回

著者: 波多野和夫1 浜中淑彦2

所属機関: 1大阪赤十字病院精神神経科 2京都大学医学部精神神経科

ページ範囲:P.517 - P.528

文献購入ページに移動
6.患者の色彩体験の変化
 我々は先に分類原理の欠如と並行して,色見本の山を見た時の現象的な印象が正常状態から変化を来していることを述べた。分類検査その他類似の状況に於ける患者を直接に観察するだけでも,患者の色彩体験が何らかの病的変化を来しているにちがいないとの動かし難い印象を受ける。だから様々な研究者がこの種の患者には言語障害の他に色彩知覚の一次的障害が存在すると考えたのも理解出来るのである。しかしアノマロスコープなどの色覚検査の結果完全な色覚正常者であることが証明されたので,色覚障害はいわば「より高次の」性質を持つと考えざるを得なくなった。研究者の立場次第でこのことについては種々さまざまな考え方が抱かれることになった。
 Berze(原注29)は名辞健忘の他にも色彩視Farbensehenの一次的障害が存在し,それは通常の意味での色覚異常ではないにしても,「色彩質Farbqualitatが他の要素と対等に注意を喚起すること」が出来ない結果を来すような障害であると考えた。Berzeによればこのことによって色調よりも明度を優先する傾向が生ずるとされる。Berzeはなかんずくこの仮説を患者が明度に従って分類することが多いという事実から引き出したのである。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら