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研究と報告
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抄録 漢字新作の2例について論じた。この2例は対照であり,一方は漢字が複雑であるのに意味が乏しく,他方は漢字は単純であるが各漢字が明確な意味を与えられている。言語学的に考えると,前者では貧困化したsignifieを補償するために不自然なsignifiantが出現し,後者では肥大したsignifieにsignifiantを与えることで安定が求められる。さらに後者の場合には,漢字新作が単なる遊戯性の所産ではなく,コミュニケーションへの志向が含まれていることを述べた。
また,この2つのタイプの漢字新作は,漢字のもつ相貌性と物神性という2つの要素のうち,いずれかを誇張したものであることを指摘した。すなわち,不明確な内容を複雑な字体で表現した前者は,相貌性優位の例であり,簡単な字形の新作漢字に不安鎮静とか病気の治癒といった魔術的な力を与える後者は,物神性優位の例である,と論じた。
また,この2つのタイプの漢字新作は,漢字のもつ相貌性と物神性という2つの要素のうち,いずれかを誇張したものであることを指摘した。すなわち,不明確な内容を複雑な字体で表現した前者は,相貌性優位の例であり,簡単な字形の新作漢字に不安鎮静とか病気の治癒といった魔術的な力を与える後者は,物神性優位の例である,と論じた。
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