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文献詳細

雑誌文献

精神医学23巻9号

1981年09月発行

文献概要

研究と報告

精神分裂病者の身体的罹病性について—1.悪性腫瘍との関連 重度精神障害の予後決定因子に関するWHO研究(第1報)

著者: 太田保之12 中根允文12 高橋良12

所属機関: 1長崎大学医学部精神神経科 2機能性精神病に関するWHO研究協力センター

ページ範囲:P.875 - P.884

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 抄録 1960年〜1978年の期間に,長崎市在住者で精神分裂病の診断を受けた病者は,3107例であることが確認された。そしてほぼ完璧にととのっている長崎市在住の腫瘍患者登録表とその3107例の分裂病者を,氏名,性,出生年月日,住所などを照合させた結果,44例の分裂病者が悪性腫瘍を併発していることが判った。
 各年齢層ごとに,分裂病者のperson yearと一般人口の年間悪性腫瘍罹患率を用いて分裂病者悪性腫瘍罹患期待値を算出し,その期待値と実数値の間で差を比較し,次の所見を得た。
 1)男女あわせた全分裂病者と女性分裂病者は,一般人口に比し全悪性腫瘍の罹患率が有意に高かった。
 2)分裂病者を出生年で区分し,それに対応する一般人口との間で悪性腫瘍罹患率を比較すると,1925年以降生れの分裂病者では,男性,女性,および全分裂病者で悪性腫瘍罹患率が高かった。
 3)悪性腫瘍の部位別では,女性分裂病者の乳癌併発率は,女性一般人口に比べ有意に高率であった。
 4)悪性腫瘍併発分裂病者と対照群の非併発分裂病者の間で,向精神薬服用量,入院期間,原爆被爆体験の有無などの比較を行なったが,有意な差はなく,それらの要因が分裂病者の悪性腫瘍高罹患率に関与している可能性は否定的であった。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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