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文献詳細

雑誌文献

精神医学23巻9号

1981年09月発行

文献概要

研究と報告

精神分裂病者の自殺について—既遂96例の分析から

著者: 上島国利1 津村哲彦1 大内美知枝1 村尾修1 橋口京子1 林光輝1 服部宗和1 川原延夫1 神定守2 藤井康男2 長谷川洋一2 池上秀明2

所属機関: 1杏林大学医学部精神神経科教室 2慶応義塾大学医学部精神神経科教室

ページ範囲:P.893 - P.902

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 抄録 昭和42年から55年迄に10ヵ所の精神病院で入院中あるいは退院後通院中に自殺した分裂病患者男女計96名について分析した。その結果分裂病者の自殺既遂例では,①自殺時平均年齢は男女共35歳前後で発病から自殺迄の平均期間は10年以上であり,分裂病者の自殺は慢性期に多いことが判明した。②自殺の動機が了解可能だった患者は19.8%あり,①,②の結果は分裂病の自殺が病初期に多く了解不能であるという従来の研究とは異なっていた。この理由の1つとして向精神薬の臨床への導入があげられた。③向精神薬はhaloperidol(HPL)やfluphenazine enanthateの使用頻度が高くHPLは使用量も多く単独使用頻度も高かった。向精神薬による,分裂病に元来備わっている自殺防禦機制の侵害や直接的作用としてのdrug-induced depressionが重要視された。④自殺の予告徴候としてうつ状態,自殺念慮・企図の既往が指摘された。⑤自殺予防のため治療者が家庭環境の調整改善に十分な知識と配慮を持つことの必要性が強調された。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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