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特別講演
国際精神衛生活動
著者: 林宗義1
所属機関: 1ブリティッシュ・コロンビア大学精神科
ページ範囲:P.1253 - P.1261
文献購入ページに移動 Ⅰ.国際活動に入ったいきさつ--二文化的精神医学体験をとおして
国際精神衛生活動は,これまでもすでに,具体的なことに色々触れた註)。であるから,それらを参照されつつ読んでいただきたいのであるが,今回は,国際精神衛生活動の展望,あるいはその本質はどの辺りにあるだろうかを,難しい問題であるけれども,私の経験を通じて些か考えてみたところを述べたいのである。
第1に,よく聞かれることだが,なぜ君は国際活動をそんなに一所懸命やっているのか,という問いへの答えである。これは,一言では答えられない問いであるが,考えてみるといくつかの間題があるように思う。まず,私が精神医学の手ほどきを受けた日本においてすでに二文化的(bicultural)な精神医学体験をしておったということがある。自分は台湾という1つの教育・文化の場で育った人間で,それが日本の医者という立場で日本人を診る。日本人は台湾の人間と似ているところもあるが違うところもいろいろあるわけで,したがって私はいつもbiculturalな立場で患者を診,治療するという習慣を身につけていたというか,そういう状況に身を置くことを余儀なくさせられていた。私の精神医学はつねに二文化的,あるいは多文化的であった。
国際精神衛生活動は,これまでもすでに,具体的なことに色々触れた註)。であるから,それらを参照されつつ読んでいただきたいのであるが,今回は,国際精神衛生活動の展望,あるいはその本質はどの辺りにあるだろうかを,難しい問題であるけれども,私の経験を通じて些か考えてみたところを述べたいのである。
第1に,よく聞かれることだが,なぜ君は国際活動をそんなに一所懸命やっているのか,という問いへの答えである。これは,一言では答えられない問いであるが,考えてみるといくつかの間題があるように思う。まず,私が精神医学の手ほどきを受けた日本においてすでに二文化的(bicultural)な精神医学体験をしておったということがある。自分は台湾という1つの教育・文化の場で育った人間で,それが日本の医者という立場で日本人を診る。日本人は台湾の人間と似ているところもあるが違うところもいろいろあるわけで,したがって私はいつもbiculturalな立場で患者を診,治療するという習慣を身につけていたというか,そういう状況に身を置くことを余儀なくさせられていた。私の精神医学はつねに二文化的,あるいは多文化的であった。
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