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文献詳細

雑誌文献

精神医学24巻12号

1982年12月発行

特集 アルコール依存症の精神医学—東京都精神医学総合研究所 第10回シンポジウムから

アルコール依存症の病因—最近の生物学的展望

著者: 加藤伸勝1

所属機関: 1京都府立医科大学精神医学教室

ページ範囲:P.1281 - P.1290

文献概要

I.はじめに
 わが国の年間酒類の消費量は昭和40年を100とすると昭和54年には192.2となり,15年間に2倍に増加している。成人男子の90%,女子の45%が飲酒しており,1日平均純アルコールにして150ml(日本酒5合弱)を飲用する大量飲酒者は,昭和54年に推計174万人を数えるに至っている。大量飲酒者の増加は,アルコール依存者の増加の指標ともなることで,わが国のアルコール問題は年と共に深刻化の度を加えつつあるといえよう1)。そこで本項では,アルコール依存症の一般的病因に触れる中で,わが国のアルコール問題に言及してゆくことにする.
 アルコール依存症は薬物依存一般と共通する成立機序が考えられているが,それは大きく3つに分けられる。
 まず,依存薬があること,それを受け入れるヒトがいること,依存薬とヒトを結びつける場があることである。
 アルコール依存症の場合,もちろん,依存薬はアルコールであり,依存薬とヒトを結ぶ環境は社会ということになる。
 そこで,これらの3つの要素につき,個別的に吟味することによって,アルコール依存症の病因を探って見たい。
 疫学的立場からは,しばしば作用因(agent),宿主(host)と環境(environment)の3区分が行われるが,本項においてもこれに準じて項目を分けるが,環境としての社会因子については割愛する。したがって,主として生物学的観点からその病因を探ることとなろう。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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