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文献詳細

雑誌文献

精神医学24巻12号

1982年12月発行

研究と報告

慢性覚醒剤中毒の幻覚妄想状態にみられる逆耐性現象と抗精神病薬の再燃予防効果

著者: 佐藤光源1 秋山一文1 中島豊爾1 大月三郎1 原田俊樹2 船越美保2 長尾卓夫2

所属機関: 1岡山大学医学部精神神経医学教室 2高岡病院

ページ範囲:P.1333 - P.1340

文献概要

 抄録 慢性覚醒剤中毒で幻覚妄想状態を来した21症例を報告した。まず,その臨床経過に履歴現象(臺)を認めた16症例について記載し,長期連用時と再注射による急性再燃時の幻覚妄想状態について考察した。そして,それが注射後の一過性の自己または自我意識の変容であり,分裂病の自我解体と趣きを異にすること,およびその基本的な障害が「外界との適切な関係の途絶」であるとした。第2に,常用していた量よりも少ない量の覚醒剤1回再注射で幻覚妄想状態が急性再燃した4症例,ストレスによる急性再燃もみられた1症例を記載した。そして,覚醒剤中毒の幻覚妄想状態にみられる履歴現象が覚醒剤への異常過敏反応性,すなわち逆耐性現象によることを示した。また,この異常過敏反応性が1年7ヵ月後にもみられ,長期持続性の脳内変化によることを示し,ついで,有機溶媒嗜癖で過去に幻覚妄想状態を来したことがある症例は覚醒剤の連用で早期に幻覚妄想状態に陥いる傾向があることを指摘した。この傾向とストレスによる自然再燃を逆耐性の交差現象としてとらえた。第3に,抗精神病薬服用下でひそかに覚醒剤を再注射していた8症例を記載した。このうち7症例は,ハロペリドール3mg/日といった比較的少量の服薬で急性再燃が抑制されていた。この結果をわれわれの一連の実験的研究成果を取り入れながら考察し,覚醒剤中毒における幻覚妄想状態の再燃しやすさが,断薬後も長期にわたって持続する脳カテコラミン作動系の過敏反応性に由来するものであり,中脳辺縁ドパミン作動系にみられる薬物受容体の増加がその一因を成すと推論した。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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