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研究と報告
幻覚妄想状態をもって6歳2ヵ月で急性に発症した精神分裂病が疑われる1例
著者: 栗田広12
所属機関: 1東京大学医学部精神医学教室 2国立武蔵療養所神経センター診断研究部
ページ範囲:P.1349 - P.1356
文献購入ページに移動 抄録 6歳2ヵ月の男児に急性の幻覚妄想状態が生じた。患児にはお化けによって自己の身体が改造されるという妄想や,幻聴の存在が推定され,幻覚妄想状態は抗精神病薬により約9ヵ月で軽快した。治療中断後,三環抗うつ剤服用後に急性増悪し,再び抗精神病薬により軽快した。8歳で普通学級に復帰したが,間もなく登校を拒否し,小学3年より心障学級に通っている。しかし4年後も発症当時の幼稚園の友人,教師には被害的な構えを有し,暦年齢10歳1ヵ月で田中ビネー式IQは71であり,知能,人格の水準低下を認める。病前の身体,知能発達に遅滞はなく遺伝負因はない。神経学的所見はなく,脳器質的ないし症候性精神病を疑わせる臨床所見もない。脳波,CTスキャン,アミノ酸代謝異常スクリーニング検査などに異常はない。幼児自閉症近縁の発達障害とも異なり,DSM-Ⅲなどによれば精神分裂病の疑いが最も高く,妄想を有する小児例としては,最年少に属する例と思われる。
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