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文献詳細

雑誌文献

精神医学24巻12号

1982年12月発行

特別講演

日本の精神医学・精神衛生をみて

著者: 林宗義1

所属機関: 1ブリティッシュ・コロンビア大学精神科

ページ範囲:P.1389 - P.1398

文献概要

Ⅰ.訪日にあたっての目的
 日本へ昨年やってきた時に,私は3つの希望を持っていた。最大の目的は,日本的な精神医学,あるいは日本の社会と文化に根ざした日本の精神医療をもう少しはっきり知りたいことであった。
 色々な国をまわり,色々な仕事をしているうちに,私の頭に最後に残った大きな問題は,やはり,精神医学はそこの文化,その土壌に根づかなくてはほんとうにそこの人間の精神医療に役立たない。また精神医学もほんとうに伸びないんじゃないかということであった。この「リレヴァンシー」(relevancy)という言葉が,ここ30年間,世界を駈けずりまわって最後に到達したいちばん大きな問題であった。私の最近発表する論文の中にはこのrelevancyということばがよく出てくるのもそのためである。とくに東洋,その中でも自分の出身した漢民族,あるいは中国というか台湾というか,その辺りにおける精神医学はどういう根を持つべきか,を考えて,私は最近アーサー・クラインマン(Dr. Arthur Klienman)と一緒に1冊の本を編集した。それは『中国文化における正常行動と異常行動』(Normal and Abnormal Behavior in Chinese Culture)であるが,その時に,もしできたら次にはRelevancy of Psychiatric Treatment in Chinese Cultureを書こうと思って,今考えているところである。そのあかつきには,こんどは日本について,Relevancy of Psychiatric Treatment in Japanese Cultureをもっと知りたいと思っている。できたら本にまとめたい。そういう希望があった。そして,これが私の今度の1年間の滞日のいちばん大きな主題であった。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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