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文献詳細

雑誌文献

精神医学24巻2号

1982年02月発行

特集 リチウムの臨床と基礎—最近の話題

躁うつ病におけるリチウム療法の位置

著者: 大熊輝雄1

所属機関: 1東北大学医学部精神医学教室

ページ範囲:P.122 - P.136

文献概要

I.はじめに―リチウム療法の意義と位置づけ
 炭酸リチウムを中心とするリチウム塩は,Cade, F. J. 10)(1949)によって躁状態の治療に導入され,Schou, M. ら65)(1954)によってその抗躁効果,躁うつ病予防効果などが確認されて以来,現在では躁うつ病の治療に欠くことのできない薬物になっている。
 精神科領域におけるリチウム療法は,つぎのようないくつかの意義を持っていると考えられる。(1)従来難治であった躁状態に対して顕著な治療効果をもつこと,(2)従来の電撃療法や抗精神病薬療法では不可能だった躁うつ病における病相反復出現の予防にも有効で,躁うつ病の本格的治療への途をひらいたこと,(3)反応者responder,非反応者non-responderの問題を介して,躁うつ病の亜型分類や病態生理,成因の研究などに多くの示唆を与えていること。
 しかし,リチウム療法は精神科薬物療法としてはまだ歴史が浅く,その臨床効果,副作用,作用機序などについて未解決の問題が少なくない。たとえば,躁うつ病とくにうつ病に対する有効性の問題,responder・non-responderの問題効果の予測predictionが可能かどうかの問題,リチウム療法の継続・中止・怠薬,他剤との併用と相互作用,血中濃度,長期使用時の副作用,他の治療法との比較などについては,なお今後の検討が必要であると思われる。本稿ではこれらの問題点のいくつかをとりあげ,その現状と今後の研究のあり方を考えてみたい。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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