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文献詳細

雑誌文献

精神医学24巻2号

1982年02月発行

文献概要

特集 リチウムの臨床と基礎—最近の話題

リチウムの副作用・中毒—中枢神経系

著者: 栗原雅直1

所属機関: 1虎の門病院精神科

ページ範囲:P.155 - P.166

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I.はじめに
 リチウム塩は,他の抗精神病薬と比較して,ねむ気・倦怠感などの副作用が少ないために,躁うつ病の予防・治療には一見用いやすいという印象がある。他の薬と比較して,のませやすく,患者の側の抵抗が割合少ないという長所があるために,つい無警戒に投薬を続けやすいのであるが,実は過量投与によって重大な副作用が起こりうるのである。
 わが国でも,初期における石田1)の死亡例報告をはじめとして,リチウムによる重篤な副作用は,しばしば報告されている。海外の副作用情報をファイルしてみても,リチウムの副作用報告は,ほとんど抗精神病薬とか抗うつ薬とかいう一つの大分類項目に匹敵するほどの頻度で集積されつつある。
 またはじめには予想されなかった,記憶障害の副作用2,3)や,芸術創造力の低下も起こるなどということも報告されるようになり,「他の抗精神病薬のような,知的低下の副作用がない」と説得して患者にリチウムをのませ続けることが,つねに妥当とは限らなくなってきた。
 にもかかわらずリチウムはessential drugの一つであり,躁うつ病の予防・治療に欠かすわけにはいかないので,われわれは他の薬以上にリチウムの副作用にくわしく,またその使用にあたって細心かつ習熟すべきであると言える。
 今回私に割当てられた課題は,リチウムの中枢神経系への副作用ということであり,その範囲は広大でまた重要な項目なので,責任を感ずるものである。われわれはたまたま重篤な1中毒例をすでに報告しているが,必ずしも一般の精神科医の目にふれやすい形とも言い切れないので,今回あらためて症例の経過をまとめ直し,文献的考察を付して参考に供したい。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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