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言語性および非言語性認知の相補性と分裂病—精神患者のダイコティック・リスニング
著者: 清田一民12
所属機関: 1熊本大学医学部神経精神科 2現城南病院精神科
ページ範囲:P.271 - P.280
文献購入ページに移動 抄録 1)digit-DLT(dichotic listening test)および「数字」のかわりに身近な「物音」の,音質の弁別とその言語化から成るsound-DLTを用いて臨床検査を行った。digit-DLTで右耳有利の左右差を示すものが,sound-DLTでは左右差を示さない。2)分裂病群は,この2種のDLTの成績が,いずれも量的に有意な低下を示し,かつdigit-DLTによる左右差の増大が有意であった。ただし,この中には正常範囲のものが約20%含まれている。これらは臨床症状改善の程度も良好であった。3)分裂病者におけるDLTの成績不良の基本的因子として,大脳の左右の「半球間」のみならず,一側とくに左側の「半球内」における非言語性認知と言語性認知の「相補性の欠陥」が想定されること,この欠陥のために,DLTに用いられる言語的素材の違いによって,「左右差の逆転」も起こりうること,および,この欠陥は,かならずしも固定的ではなく,可変的段階もありうることを指摘した。
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