文献詳細
文献概要
特集 視覚失認
いわゆる“物体失認”
著者: 野上芳美1
所属機関: 1日本大学医学部精神神経科
ページ範囲:P.391 - P.398
文献購入ページに移動I.はじめに
神経心理学の歴史上,物体失認は視覚失認のなかでも特に問題のある対象として論争がくりかえされてきた。そもそも〈失認〉と呼ぶに値する実体があるのか,そのような現象の成立機制は何かということは,この領域の権威とされる人びとが論争を重ねてきたにも拘わらず,万人が同意するような結論は得られなかった。このような状況の下で,ここに筆者が新たに付け加えられることがあるとは思われないが,筆者なりに一応総括して話題を提供したい。
この種の発表では,自己の症例や経験に基づいて語るべきであるが,かつて筆者の経験した症例26)は,物体失認としては純粋例とは言い難く,本稿において考察の素材とはしがたいので,文献例に依存せざるを得ないことをお断りしておきたい。
神経心理学の歴史上,物体失認は視覚失認のなかでも特に問題のある対象として論争がくりかえされてきた。そもそも〈失認〉と呼ぶに値する実体があるのか,そのような現象の成立機制は何かということは,この領域の権威とされる人びとが論争を重ねてきたにも拘わらず,万人が同意するような結論は得られなかった。このような状況の下で,ここに筆者が新たに付け加えられることがあるとは思われないが,筆者なりに一応総括して話題を提供したい。
この種の発表では,自己の症例や経験に基づいて語るべきであるが,かつて筆者の経験した症例26)は,物体失認としては純粋例とは言い難く,本稿において考察の素材とはしがたいので,文献例に依存せざるを得ないことをお断りしておきたい。
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