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短報
Zimelidineのヒト成長ホルモンおよびプロラクチン分泌反応に及ぼす影響
著者: 澤温1 小渡敬1 鈴木孝尚1 中澤恒幸1
所属機関: 1名古屋保健衛生大学医学部精神神経科
ページ範囲:P.519 - P.522
文献購入ページに移動うつ病の治療は1950年代後半よりimipramineに始まる三環系抗うつ剤が主流であったが,その効果発現の遅いことや末梢性抗コリン作用等の副作用が時に治療の障害になると指摘されている1)。
近年,非三環系抗うつ剤として,二環系抗うつ剤,四環系抗うつ剤が出現したが,これらはいずれも効果の発現が早く,上記欠点の少ないことを特徴としている。特に二環系抗うつ剤でbromophenylpyridylallylamine系誘導体であるzimelidine(図1)は,作用機転の上でも中枢ならびに末梢でセロトニン(5-HT)neuronに選択的に作用し,ラットに経口投与した実験では,その脳における5-HT再取り込み抑制効果はclomipramineの約6倍であると報告されている2)。
われわれは,これまで三環系うつ剤であるclomipramine,desipramineについて血中成長ホルモン(GH)の分泌反応について検討してきた。その結果,ノルエピネフリン再取り込み阻害作用を主作用とするdesipramineは,健常ボランティアにおいて明らかな分泌反応を示したが,5-HT再取り込み阻害作用が相対的に強いclomipramineはほとんど影響を及ぼさないことが明らかになった3)。
一方,中枢性抗ドーパミン作用を有するneurolepticaは随伴的に血中プロラクチン(PRL)値を上昇させることが知られている。抗うつ剤に関してもsulpiride,amoxapineは抗ドーパミン作用を有することから血中PRL値を上昇させることが知られている。さらに三環系抗うつ剤であるimipramineおよびamitriptylineについても血中PRL値を上昇させるとの報告4)もあるが,否定的な見解5)もある。PRL値の生理的役割はまだ解明されていないが,血中PRL値の上昇に伴う安全性には十分留意する必要がある。
今回,われわれはclomipramine以上に中枢での選択的5-HT取り込み阻害作用を有するzimelidineを健常ボランティアに使用する機会を得たので,本剤投与による血中GHおよび血中PRL分泌に及ぼす影響を検討した。
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