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研究と報告
2歳半以後より5歳までに,精神発達の崩壊を示した9児童例—“折れ線型自閉症”との関係について
著者: 栗田広12
所属機関: 1東京大学医学部精神医学教室 2国立武蔵療養所神経センター診断研究部
ページ範囲:P.939 - P.948
文献購入ページに移動 抄録 2歳半以後5歳までに,精神発達の崩壊を示した9例を検討した。主な臨床的特徴は,2歳半以前の発達は正常か,それに近いこと,2歳半以後,それまで存在した有意味語がほぼ消失し,対人反応および社会性が障害され,執着傾向や常同行動が出現し,知的水準も低下することである。不安症状も比較的よく認められる。全例,粗大な神経学的所見はなく,2例を除き脳波異常はない。家族背景,病前の発達などに共通の所見はない。発症時に身体疾患を疑う症状はないが,発症に先行して心理社会的ストレスが7例に,産科的異常が8例にと高率に認められ,8例が第1子である。同一相談機関受診者8例の男女比は1.7:1で,幼児自閉症のそれに比して,女性に偏っている可能性がある。9例はICD-9の崩壊精神病(disintegrative psychosis)と診断されるが,これらと折れ線型自閉症は,臨床像や経過が類似しており,同種の脳機能障害を基礎にもつ疾患として,一括できる可能性がある。
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