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文献詳細

雑誌文献

精神医学24巻9号

1982年09月発行

文献概要

特別講演

H. E. Ehrhardt:国際比較の観点よりみたドイツ連邦共和国の精神医療の今日的問題

著者: 武藤隆1

所属機関: 1信州大学医学部精神医学教室

ページ範囲:P.1019 - P.1030

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I.はじめに
 精神的疾患および障害の科学としての精神医学は,医学における他の臨床科目と同様に,その領域に該当する患者達をその都度可能なかぎり治療しようと努力する使命と義務を有している。医療は,まず第一に,そして当然のことながら,ある特定の患者の病的状態に適したかつ最大の効果を約束するすべての身体的および精神的治療法を用いる医学的処置である。医療には,更に,共同体への社会的統合ないし再統合の前提となる精神的健康を,完全にあるいは可能なかぎりに回復することを目的とするリハビリテーションが含まれている。最後に予防は,現代の精神医療の第三の支柱である。我々は,精神的障害の進展を妨げるために,たとえば教育制度において精神衛生学的手法を用いる。この種の障害の早期発見,早期治療の可能性を改善することは非常に大切である。
 残念ながら精神医学領域におけるリハビリテーションと予防の保健政策上,社会政策上の重要性は,長い間ごく最近まで多くの国々において全く見過ごされ,そうでなくても過少評価されていた。精神医療の概念をより明確化すること,そして部分領域に精密化することは,ますます必要であることが明らかとなる。実際には限りのない,いわゆる一次予防の領域と,たとえば修復不可能な重症の脳欠陥のある患者の看護とは,精神医療に組み入れられる諸使命の幅広い尺度の,いわば両極端をなしている。個々の医師の可能性と能力は別として,社会法的観点でのこの種の考え方は,所管分担を考慮するとき,とりわけ財政的援助の問題や優先順位の設定の場合に,非常に非実際的であるために責任ある政治家に対し,刺激的であるよりは萎縮させるように働き,ほとんど必然的に誤った投資へと導いてしまう。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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