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文献詳細

雑誌文献

精神医学25巻10号

1983年10月発行

研究と報告

Balint症候群の1例—とくに出現・消褪過程について

著者: 松永哲夫1 大山繁鈴1 木高秋2 佐藤真弓2 丸野陽一2 中村茂代志2

所属機関: 1熊本大学医学部神経精神医学教室 2飯塚病院神経精神科

ページ範囲:P.1091 - P.1098

文献概要

 (1)Balint症候群の出現・消槌過程を報告した。症例は58歳,男性。"字が曲がる","車庫入れの時にぶつける"などの軽い空間知覚障害で始まり,緩徐に進行し,精神性注視麻痺や視覚性注意障害の前段階と思われる諸症状を経て,定型的なBalint症候群へと移行した。Balint症候群は約2ヵ月間つづき,その後徐々に軽快したが,3主徴のうち視覚失調だけが残り,他の2症状とは異なる経過を示した。
 (2)基礎疾患としては脳血管障害が考えられ,責任病変としては症状の進行と並行してCT上に低吸収域が出現した左頭頂・後頭領域,および着衣失行や左側無視の傾向から右頭頂・後頭領域の障害が推測された。
 (3)Balint症候群の出現・消褪過程を検討した結果,より本質的な症状は視認知の障害,すなわち視覚性注意障害と思われた。
 またBalint症候群と空間知覚障害とは相互に移行しうるものであり,前者は後者の最大表現にすぎないと考えられた。
 (4)Balint症候群と同時期にKorsakoff症候群と脳波の基礎律動の徐波化が認められたことから,本症候群の発現には両側頭頂・後頭領域のみならず,前頭葉,辺縁系,網様体賦活系などの関与している可能性について若干の考察を加えた。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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