文献詳細
研究と報告
Balint症候群の1例—とくに出現・消褪過程について
著者: 松永哲夫1 大山繁鈴1 木高秋2 佐藤真弓2 丸野陽一2 中村茂代志2
所属機関: 1熊本大学医学部神経精神医学教室 2飯塚病院神経精神科
ページ範囲:P.1091 - P.1098
文献概要
(2)基礎疾患としては脳血管障害が考えられ,責任病変としては症状の進行と並行してCT上に低吸収域が出現した左頭頂・後頭領域,および着衣失行や左側無視の傾向から右頭頂・後頭領域の障害が推測された。
(3)Balint症候群の出現・消褪過程を検討した結果,より本質的な症状は視認知の障害,すなわち視覚性注意障害と思われた。
またBalint症候群と空間知覚障害とは相互に移行しうるものであり,前者は後者の最大表現にすぎないと考えられた。
(4)Balint症候群と同時期にKorsakoff症候群と脳波の基礎律動の徐波化が認められたことから,本症候群の発現には両側頭頂・後頭領域のみならず,前頭葉,辺縁系,網様体賦活系などの関与している可能性について若干の考察を加えた。
掲載誌情報