icon fsr

文献詳細

雑誌文献

精神医学25巻10号

1983年10月発行

文献概要

資料

精神分裂病のプロスタグランディン仮説の現況

著者: 貝谷壽宣1 竹内巧治1

所属機関: 1岐阜大学医学部神経精神医学教室

ページ範囲:P.1109 - P.1117

文献購入ページに移動
I.はじめに
 抗精神病薬の出現により分裂病治療は画期的な変遷を遂げてきた。急性期の幻覚妄想状態に対してドパミン(DA)遮断剤は素晴らしい効果を示し外来治療のできる範囲が大幅に増加した。しかしなお精神病院に長年月入院を続ける慢性患者が数多いのも事実である。はたして,慢性分裂病者にたとえ少量であろうとDA節遮断剤を長期間投与し続けることは患者にとって利益となることであろうか?遅発性ジスキネジアというような目に見える副作用だけでなく,薬物によって陰性症状を作っている可能性も充分考慮されなければならないであろう。さらに又,最近長期服薬がDA受容体の過感受性を作り,ストレスへの反応性を高め,再発しやすさを作り出しているおそれも憂慮されている。このようなことを考えると,現在我々はDA仮説に基づいた分裂病治療に甘んじているわけにはいかなくなるであろう。
 さてここ数年,プロスタグランディン(PG)仮説が2,3の学者により提出されている。このPG仮説は直接的な根拠となり得る研究成果をまだ充分にもち合わせていないが,このような分裂病治療の現況下では注目しておく価値があると思われる。PGは,脳を含む生体の殆んどの組織に分布し,広く臨床医学の領域から注目を集めており,精神医学においても重要な意義をもつものと思われる。本稿ではPGの基礎的事項を簡単に展望し,その後に分裂病のPG仮説を紹介し,現在までに報告されている精神病患者についてのPG研究の結果を検討してみたい。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?