研究と報告
分裂病の前頭葉機能障害の神経心理学的研究
著者:
斎藤治1
丹羽真一1
平松謙一1
亀山知道1
所属機関:
1東京大学医学部精神医学教室
ページ範囲:P.1149 - P.1161
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抄録 本研究は神経心理学的テスト・バッテリを用いて分裂病患者の前頭葉機能障害および大脳半球機能障害の左右差と症状との関連を検討すること,ならびに各検査の有用性と組み合わせの妥当性を検討することを目的とした。対象は分裂病患者40名(男24名,女16名)で,性比,年齢,教育年数をほぼ一致させた正常者33名を対照とした。検査は4種類の神経心理学的検査(Maze Test,Word Fluency Test,言語性・非言語性のRecency Test,Recognition Test)と2種類の一般心理検査(内田-クレペリン検査,WAIS単語問題)を組み合わせて行なった。その結果,神経心理学的検査のうちMaze Test,Recency Test,Recognition Testが有用であり,さらにこれらの検査成績から分裂病の陰性症状は右半球機能障害,特に右前頭葉機能障害と,陽性症状は左半球機能障害,特に左前頭葉機能障害との関連が示唆された。