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文献詳細

雑誌文献

精神医学25巻11号

1983年11月発行

研究と報告

アルコール性Wernicke病の経過中に出現した無動性無言性状態について—状態像・脳波・終夜睡眠脳波による発生機序の検討

著者: 弟子丸元紀1 鈴木高秋2 原田正純3

所属機関: 1熊本大学医学部精神神経科 2飯塚病院 3熊本大学体質医学研究所

ページ範囲:P.1163 - P.1170

文献概要

 抄録 症例は29歳の男性。多量の飲酒歴がある。食欲不振・嘔吐などの消化器症状と栄養障害の後に発病した。妄想・幻覚症状を主徴とするせん妄状態,次いで無動性無言性状態,コルサコフ症状群,記銘力障害などの経過を示した。神経症状として,眼症状と歩行障害を示した。以上の症状からアルコール性Wernicke病と診断した。本例の示した無動性無言性状態の発生機序について,状態像・脳波・終夜睡眠脳波によって検討した。
 本例の障害の主座は,脳幹部・視床下部と考えるが,同時に原始反射の出現やその後の経過でみられた,抑制欠如・多幸状などの性格変化,保続および反響症状,また脳波上で前頭部に限局するθ波などの所見から,大脳皮質,主に前頭葉の障害も加わっていると考えられる。無動性無言性状態は,脳幹部・視床下部の意識障害要素と大脳機能障害,特に前頭葉障害の両者のある一定の相関によって出現したと考える。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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