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文献詳細

雑誌文献

精神医学25巻11号

1983年11月発行

短報

Fragile Xを伴う精神薄弱の1例

著者: 南光進一郎12

所属機関: 1東京大学医学部脳研究施設心理部門 2現・帝京大学医学部精神神経科

ページ範囲:P.1226 - P.1227

文献概要

I.はじめに
 Fragile X症候群はこの3,4年の間に確立した新しい症候群で,伴性劣性(X-linked recessive―すなわち一般には兄弟発症)の遺伝形式をとる病理型精神薄弱の一型である。その臨床的特徴は中等度から重度の知能障害,大きな性器(macroorchidism)と大きな耳介,さまざまの小奇形で,従来Martin-Bell-Renpenning症候群1,2)と呼ばれていたものに該当する。ここでFragile Xとは正確にはFragile site Xq28と表され染色体分析でX染色体の分染バンド上q28(長腕末端部)に相当する部分に切断(break)ないしギャップ(gap)―すなわちfragility―を示すものである(図参照)。
 この症候群が臨床上重要である最大の理由はその頻度の高さであろう。HerbstとMiller3)の推定によれば,男子新生児1,000人あたり0.92人出生するとされるが,これは原因の明らかな精神薄弱のうち最も頻度の高いダウン症候群に次ぐ高い頻度ということになる。またTurnerら,Herbstらは伴性劣性の遺伝型式をとる精神薄弱の30〜50%が本症候群であると推定している4)。まさに最近の精神薄弱の病因研究史上画期的な発見ということができよう。しかし本邦では本症候群の報告はまだみられないようである。我々は英国においてその1例を経験したのでこれを報告したい。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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