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文献詳細

雑誌文献

精神医学25巻2号

1983年02月発行

文献概要

特集 薬物と睡眠をめぐって

睡眠促進ペプチド研究の現況

著者: 井上昌次郎1

所属機関: 1東京医科歯科大学医用器材研究所

ページ範囲:P.127 - P.133

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I.歴史的背景
 睡眠物質研究の歴史は,意外に古い。20世紀の始め,フランスのLegendreとPiéron23)は,断眠犬の脳脊髄液と血清とに催眠作用のあることを報告している。彼らは,6〜15日も眠らさないでおいたイヌから,脳脊髄液を抜き取り,これを正常なイヌの脳室内に注射した。すると注射されたイヌは,腹ばいになったり,丸まったりして眠ってしまった。血清の脳室内注射も同様の効果があった。この結果を彼らは,こう説明している。断眠犬の脳脊髄液と血液には,長期間眠らなかったことにより,疲労による毒素が溜っている。これは睡眠毒素(hypnotoxin)と呼ぶべきもので,脳に作用して眠りを引き起すのだ,と。
 この実験は,約20年後になってアメリカのSchnedorf and Ivy34)によって,より厳密に追試され,ほぼ確認されている。この時期つまり1930年代は,内分泌学の発展期で,多くのホルモンが発見されている。睡眠についても,毒素という二次産物でなく,睡眠ホルモンそのものの存在を仮定して,これを探そうとした実験やその実在を示唆する実験結果が,当時いくつも報告されている。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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