文献詳細
文献概要
特集 精神医学における病態モデル
行動薬理学からみた病態モデル
著者: 田所作太郎1
所属機関: 1群馬大学医学部行動医学研究施設行動分析学部門
ページ範囲:P.229 - P.234
文献購入ページに移動I.病態モデルに関する私見
私は十数年来,行動薬理学の実験にたずさわってきたが,正直のところ未だ疾患や病態のモデルを意識して作ろうと思ったことはない。この点では本特集の執筆者として適当かどうかは疑問である。しかし私が行動に関する研究を専門とするようになった動機の1つは,ヒトと動物の行動記録に類似性を直感し,これに強く魅せられたことにある。また行動のなかには,精神の表現が秘められているとも思った。その後ある種の動物行動を病態モデルとみなしたい気持が潜在していたかもしれないが,表面上では無理やりこの発想を押え続けてきたというのが本音であろう。
行動の研究を実施するにあたっては,つとめて擬人的解釈を避け,行動の変化やその推移を客観的かつ定量的に記述するよう先輩達から繰返し強調されてきた。私もこの態度は正しいと信じていた。また向精神薬のスクリーニング,活性検定,臨床効果予測等の行動薬理試験にとって重要なことは,ヒトの行動変化との類似性ではなく,動物レベルで把握された効果の方向とその強度に関するヒトと動物との比例的相関であると思ってきた。しかし研究が進めば,そこから病態や疾患モデルとしての意義を見いだしうる可能性は大きい。ヒトと動物の解剖学的あるいは機能的差異をあまりにも強調し,動物実験を真向から否定するのは極論である。
私は十数年来,行動薬理学の実験にたずさわってきたが,正直のところ未だ疾患や病態のモデルを意識して作ろうと思ったことはない。この点では本特集の執筆者として適当かどうかは疑問である。しかし私が行動に関する研究を専門とするようになった動機の1つは,ヒトと動物の行動記録に類似性を直感し,これに強く魅せられたことにある。また行動のなかには,精神の表現が秘められているとも思った。その後ある種の動物行動を病態モデルとみなしたい気持が潜在していたかもしれないが,表面上では無理やりこの発想を押え続けてきたというのが本音であろう。
行動の研究を実施するにあたっては,つとめて擬人的解釈を避け,行動の変化やその推移を客観的かつ定量的に記述するよう先輩達から繰返し強調されてきた。私もこの態度は正しいと信じていた。また向精神薬のスクリーニング,活性検定,臨床効果予測等の行動薬理試験にとって重要なことは,ヒトの行動変化との類似性ではなく,動物レベルで把握された効果の方向とその強度に関するヒトと動物との比例的相関であると思ってきた。しかし研究が進めば,そこから病態や疾患モデルとしての意義を見いだしうる可能性は大きい。ヒトと動物の解剖学的あるいは機能的差異をあまりにも強調し,動物実験を真向から否定するのは極論である。
掲載誌情報