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特集 精神医学における病態モデル
動物のモデル不眠症
著者: 大熊輝雄1
所属機関: 1東北大学医学部精神医学教室
ページ範囲:P.265 - P.274
文献購入ページに移動I.はじめに―「モデル不眠症」の必要性
睡眠薬は入眠促進効果,睡眠持続(維持)効果,睡眠深化効果などをもっており,新しい睡眠薬を開発するときには,これらの効果の有無や程度を評価することが必要である。しかし,ヒトの場合についていえば,健常者の多くは睡眠が良好であり,入眠潜時は短く,睡眠時間は長く,中途覚醒も少ないなど,睡眠は質量ともに必要が満足された状態,いわば飽和状態にあるので,このような健常者を対象にして睡眠薬の睡眠促進効果を検討しようとすることは,きわめて非能率的であるといわざるをえない。事実,健常者に通常使用量程度の睡眠薬を投与した結果では,入睡潜時,各睡眠段階の出現率などには有意の変化はみられない(大熊,1980;Okuma and Honda,1978;Okumaet al,1981)(図1)。
このような事情は,実験動物についても同様である。すなわち,実験動物の多くは,比較的に好適な生活環境のなかで飼育されており,食物を求めて活動する必要もなく,外敵の脅威にもさらされないので,その動物としては最大限の睡眠をとることを許されている。したがって,このような実験動物をそのまま使用して,睡眠薬の睡眠促進効果を評価しようとすることは,睡眠の良好な健常人を対象にする場合と同様に,きわめて困難であろう。
睡眠薬は入眠促進効果,睡眠持続(維持)効果,睡眠深化効果などをもっており,新しい睡眠薬を開発するときには,これらの効果の有無や程度を評価することが必要である。しかし,ヒトの場合についていえば,健常者の多くは睡眠が良好であり,入眠潜時は短く,睡眠時間は長く,中途覚醒も少ないなど,睡眠は質量ともに必要が満足された状態,いわば飽和状態にあるので,このような健常者を対象にして睡眠薬の睡眠促進効果を検討しようとすることは,きわめて非能率的であるといわざるをえない。事実,健常者に通常使用量程度の睡眠薬を投与した結果では,入睡潜時,各睡眠段階の出現率などには有意の変化はみられない(大熊,1980;Okuma and Honda,1978;Okumaet al,1981)(図1)。
このような事情は,実験動物についても同様である。すなわち,実験動物の多くは,比較的に好適な生活環境のなかで飼育されており,食物を求めて活動する必要もなく,外敵の脅威にもさらされないので,その動物としては最大限の睡眠をとることを許されている。したがって,このような実験動物をそのまま使用して,睡眠薬の睡眠促進効果を評価しようとすることは,睡眠の良好な健常人を対象にする場合と同様に,きわめて困難であろう。
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