文献詳細
特集 聴覚失認
文献概要
I.はじめに
聴覚生理学の研究は,近年聴ニューロンの音刺激に対する反応を分析することによって進められてきた。10年ほど前まで,使用される刺激音は,ほとんど純音に限られていた。研究が次第に中枢のほうに進むにつれて,純音刺激だけではその機能を解明できないことがわかってきた。動物の鳴声などの自然音を刺激に用いる研究者も現われたが,単に自然音だけでは,種々のパラメータを自由に変えることが出来ないため,それ以上の分析を進めることができない。また性質の明らかな合成音を用いる研究者も現われたが,音声とのつながりを見通すことのできる合成音の系列を持っていないと,結局大きな発展を望むことができない。筆者らは,ネコを用い,ネコの鳴声の分析結果を参考にして,音声と関連付けることのできる合成音を用いて実験を進めた。その結果,大脳聴覚野における音声弁別の機構の一端を解明できた。この研究は,聴覚生理学と音声学の接点においてなされたものであり,両方についてある程度の知識がないと理解し難い。以下簡単に先人の業績を紹介してから筆者らの研究について述べる.
聴覚生理学の研究は,近年聴ニューロンの音刺激に対する反応を分析することによって進められてきた。10年ほど前まで,使用される刺激音は,ほとんど純音に限られていた。研究が次第に中枢のほうに進むにつれて,純音刺激だけではその機能を解明できないことがわかってきた。動物の鳴声などの自然音を刺激に用いる研究者も現われたが,単に自然音だけでは,種々のパラメータを自由に変えることが出来ないため,それ以上の分析を進めることができない。また性質の明らかな合成音を用いる研究者も現われたが,音声とのつながりを見通すことのできる合成音の系列を持っていないと,結局大きな発展を望むことができない。筆者らは,ネコを用い,ネコの鳴声の分析結果を参考にして,音声と関連付けることのできる合成音を用いて実験を進めた。その結果,大脳聴覚野における音声弁別の機構の一端を解明できた。この研究は,聴覚生理学と音声学の接点においてなされたものであり,両方についてある程度の知識がないと理解し難い。以下簡単に先人の業績を紹介してから筆者らの研究について述べる.
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