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文献概要
特集 聴覚失認
「Cortical Deafness」とは何か—文献的考察
著者: 平野正治1
所属機関: 1脳血管研究所美原記念病院
ページ範囲:P.337 - P.343
文献購入ページに移動I.はじめに
「Cortical Deafhessとは何か」というテーマで文献的考察をする時の困難さは,1)deafhessという用語の多義性と病態把握の曖昧さ,2)corticalという用語にどの程度解剖学的意味をもたせるか,について諸家の意見が必ずしも統一されていないことにある。
deafhessは「聾」あるいは「つんぼ」と邦訳され,広辞苑(岩波)では「耳の聞こえないこと,またその人」と簡単に記載され,日本国語大辞典(小学館)では「両方の耳が80dB以上の難聴のこと」,「耳が聞こえないことで日常生活に重大な支障があるもの」と記載されている。医学大辞典(南山堂)でも「ささやき声の聴取距離が0.5米以下および聞こえぬもの」と解説されている。これら日本語辞典から得られる聾の概念は,音の知覚障害としての聴覚系の障害であり,音は聞こえるがその意味把握の障害されている聴覚失認のような音の認知障害は別に取り扱われるものと考えられる。しかし,皮質聾として報告されている邦文論文での症例には聾でないものが含まれている15,28)。欧文論文になるとますますその傾向が強く,殊にPialoux(1971)26)のように皮質聾の典型的臨床像は聴覚失認であるとさえ述べるものがある。英和辞典や独和辞典でもdeafncss(Taubheit)の項では「耳の聞こえないこと」の他に「聞こうとしないこと」,「耳を傾けないこと」と音に対する被検者の随意的な態度が記載され,Der Groβe Duden(7版)でもgehorlos,unempfindlich,ungereimt,stumpf,dummなどと記載されている。しかし,Dorlandのmedical dictionaryやGuttmannのMedizinische Terminologieでは表1の如くdeafness(Taubhcit)は音の知覚障害としての色彩が強く記載されている。
「Cortical Deafhessとは何か」というテーマで文献的考察をする時の困難さは,1)deafhessという用語の多義性と病態把握の曖昧さ,2)corticalという用語にどの程度解剖学的意味をもたせるか,について諸家の意見が必ずしも統一されていないことにある。
deafhessは「聾」あるいは「つんぼ」と邦訳され,広辞苑(岩波)では「耳の聞こえないこと,またその人」と簡単に記載され,日本国語大辞典(小学館)では「両方の耳が80dB以上の難聴のこと」,「耳が聞こえないことで日常生活に重大な支障があるもの」と記載されている。医学大辞典(南山堂)でも「ささやき声の聴取距離が0.5米以下および聞こえぬもの」と解説されている。これら日本語辞典から得られる聾の概念は,音の知覚障害としての聴覚系の障害であり,音は聞こえるがその意味把握の障害されている聴覚失認のような音の認知障害は別に取り扱われるものと考えられる。しかし,皮質聾として報告されている邦文論文での症例には聾でないものが含まれている15,28)。欧文論文になるとますますその傾向が強く,殊にPialoux(1971)26)のように皮質聾の典型的臨床像は聴覚失認であるとさえ述べるものがある。英和辞典や独和辞典でもdeafncss(Taubheit)の項では「耳の聞こえないこと」の他に「聞こうとしないこと」,「耳を傾けないこと」と音に対する被検者の随意的な態度が記載され,Der Groβe Duden(7版)でもgehorlos,unempfindlich,ungereimt,stumpf,dummなどと記載されている。しかし,Dorlandのmedical dictionaryやGuttmannのMedizinische Terminologieでは表1の如くdeafness(Taubhcit)は音の知覚障害としての色彩が強く記載されている。
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