文献詳細
短報
長期間にわたり再燃を繰り返した慢性覚醒剤中毒の1症例
著者: 小島秀樹12 長沼六一12 蓮沢浩明12 稲永和豊12
所属機関: 1久留米大学医学部脳疾患研究所 2久留米大学医学部精神神経科
ページ範囲:P.426 - P.429
文献概要
慢性覚醒剤中毒患者の示す幻覚妄想状態は精神分裂病のそれと酷似している。それ故,慢性覚醒剤中毒の臨床的研究の蓄積は内因精神病の解明に役立つものと考えられており,現在までに数多くの臨床的報告がみられる1,3〜5,12,15)。そして最近の覚醒剤中毒に関する研究の動向としては覚醒剤の投与によって脳に永続的な反応性の亢進が持続する機序の解明に多大の努力がなされているのが現状であろう2,6〜11,13,14,16)。臨床的には覚醒剤によって生ずる種々の精神症状の発現及び再発について情報を集めることが重要である。
われわれは慢性覚醒剤中毒患者の1症例において,幻覚の発現の仕方に注目すべき事実を見い出した。即ち,妄想のみを訴えていた患者が約6ヵ月間の覚醒剤休止後,再注射したところ,そこではじめて鮮明な幻視が発症した症例である。本症例は覚醒剤によって生じる幻視の発現機序に価値ある示唆を与えると考えられるので,その臨床および治療経過を報告し,幻覚・妄想の発現および再燃について論じてみたい。
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