研究と報告
脳障害児の入院時初期反応について
著者:
弟子丸元紀1
室伏君士2
小笠原嘉祐2
所属機関:
1熊本大学医学部神経精神科教室
2国立療養所菊池病院
ページ範囲:P.501 - P.510
抄録 脳障害児の入院時初期反応症状と病棟環境へ適応する過程について検討し,以下の3群に分類した。1)消極的反応群は重度精神薄弱児と長期施設在住児である。反応症状は新しい環境への適応反応で,反応の乏しい受動的な状態を示す。2)情動不安・爆発反応群は脳性小児麻痺児と軽度の精神薄弱児である。反応症状は母親との別離不安を示し,情動爆発や拒否・攻撃的行為を示しつつ職員と依存関係を築きながら適応している。3)逃避・防禦反応群は孤立・常同行為を示す脳性小児麻痺児・精神薄弱児と自閉症児である。反応症状は新しい環境での独特な適応反応で,逃避・拒否症状を示す。マイペースの行動を示しつつ環境内に適応している。他に体重減少・発熱・便秘・下痢・頻尿・発作の増悪などが認められた。脳障害児の入院時反応は児童の精神発達年齢と平常の状態像すなわち,反応性ともいうべきその元にある人格像や情動・欲動の現われ方と関係がある。