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文献詳細

雑誌文献

精神医学25巻5号

1983年05月発行

研究と報告

精神分裂病と診断された潜在性甲状腺機能低下症—症例報告

著者: 有田忠司1 渡辺登美子1 本田建一2 筒井一哉3

所属機関: 1新潟大学医学部精神医学教室 2新潟県立小出病院精神科 3新潟県立ガンセンター新潟病院内科

ページ範囲:P.527 - P.534

文献概要

 抄録 時にうつ病様,時に精神分裂病様,時にアメンチア様の複雑多彩な病像を呈し,抗うつ剤や抗精神病薬では改善されず,甲状腺ホルモン剤の投与で精神症状が改善した潜在性甲状腺機能低下症の1例を報告した。
 症例は27歳の女性で,精神分裂病を疑われたが,甲状腺疾患集積家系であること,甲状腺腫が認められたことから内分泌学的精査が行なわれ,慢性甲状腺炎による潜在性甲状腺機能低下症と診断された。基礎疾患の治療で精神症状も改善された。このことはフィードバック機構により血中甲状腺ホルモン濃度が正常範囲内に維持されていたので,視床下部—下垂体系機能の過活動状態が甲状腺ホルモン剤の投与で修復されたことによって精神症状も改善されたと考えられた。
 われわれの調べたかぎりでは,明確に潜在性甲状腺機能低下症と診断されて精神症状を伴ったものは,本症例が本邦では初めてであり,欧米でも珍しいものと思われた。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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