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抗精神病薬(neuroleptics)による錐体外路症状—その治療学的意義の変遷について—その2.臨床効果との関連をめぐる論争とその帰結
著者: 八木剛平1 伊藤斉2
所属機関: 1都立大久保病院神経科 2慶応義塾大学医学部精神神経科
ページ範囲:P.570 - P.582
文献購入ページに移動錐体外路症状が,一方ではneurolepticsの中枢作用の治療的側面(分裂病に対する治療活性)に,他方では反治療的側面(神経毒性および行動毒性)に関連づけられ,近年その臨床的意義の重点が後者に移行してきたことを前回述べた。本論文では,その転換期となった50年代後半から60年代を中心に,neurolepticsの抗精神病効果と錐体外路症状との関連をめぐる論争を整理する。この論争の推移は,錐体外路症状に関する概念とneurolepticsによる分裂病治療論の変遷を反映しており,またその帰結は,分裂病とその治療薬に関する今日のドーパミン仮説の,臨床面における検証としての意味をもっているように思われる。
なおこの問題に関する諸家の意見には,用語,研究方法,理論的背景などの不一致が少なくない(Chienら193),1967)。そこで第一に,ここでの論議の主題を,neurolepticsの臨床経験ないし治療研究の中で論じられた錐体外路症状の臨床上の意義に限定し,次回に述べる薬物の臨床特性としての薬理学上の意義に関する論議から区別する必要がある(Filottoら207),1969)。第二に,本論文ではどのような錐体外路症状が,どのような場合に,どのような意味で臨床効果に関連すると考えられたのかを,従来の資料に問わねばならない。各著者の見解を,臨床効果と錐体外路症状の関連の有無について無理に二分して,過度に単純化された結論を得ようとしなければ,一見混乱したようにみえる多様な意見の中に,一定の帰結が見出されるであろう。
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