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抗精神病薬(neuroleptics)による錐体外路症状—その治療学的意義の変遷について—その3.neurolepticsからantipsychoticsへ
著者: 八木剛平1 伊藤斉2
所属機関: 1都立大久保病院紳経科 2慶応義塾大学医学部精神神経科
ページ範囲:P.686 - P.701
文献購入ページに移動前回までに述べたように,neurolepticsによる錐体外路症状は,この薬物のもつ特異な神経毒性を臨床家に認識させただけでなく,しばしば分裂病に対する治療活性および行動毒性と不可分のようにみえること,また横断面においては精神面と運動面に対する複合効果をもたらし,縦断面においては臨床効果および逆効果の随伴症状として出現することから,分裂病治療学上に様々な問題を提起してきた。ここでは,これらの臨床知見がクロルプロマジンおよびレセルピア以後の薬物の開発や,実際の治療における薬物の選択基準,薬境の決定,投与方式に及ぼした影響について,また錐体外路症状を手掛りとして解明されたneurolepticsの作用局在論に基づいて示唆されている,錐体外路症状を惹起しない新しい抗精神病薬(antipsychotics)の開発可能性について考察する。今日の分裂病薬物療法の動向は,生化学的・薬理学的知見に基づいて既存のneurolepticsの特性と投与方式を規定しながら,neurolepticsにかわるalltipsychotics開発への期待を抱かせているようにみえる。
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