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古典紹介
—Ribot, T.—記憶の病—第1回
著者: 渡辺俊三1 小泉明1 佐藤時治郎1
所属機関: 1弘前大学医学部神経精神科
ページ範囲:P.773 - P.782
文献購入ページに移動記憶障害の研究資料は数多く,医学君,精神科関係の論文,種々の心理学的記述などに広範囲に散見される。さほどの苦労なくそれらを集積でき,充分な観察報告を手もとに集めることができる。ただ困難なのはそれらを分類し解釈し,記憶の機序について何がしかの結論を引き出すことは困難なことである。この点からみれば,得られた事実の価値には非常にむらがあり,最も特別なものが最もためになるわけではないし,最も珍らしいものが最も明快であるわけではない。
われわれの資料の大部分を提供してくれた医師達ほとんどは,彼らなりの方法でしか記載,研究しなかった。記憶障害は彼らにとっては一症状にすぎない。彼らはこの名称で,その症候を記載する。記憶障害を診断や予後の確立のために活用するのである。分類に関しても同様である。つまり,彼らは健忘症症例のそれぞれを,その原因である脳軟化症,脳出血,脳振盪症,中毒症などの病態と結びつけることで満足する。
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