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文献詳細

雑誌文献

精神医学25巻8号

1983年08月発行

文献概要

研究と報告

ある妄想幻覚患者の病に対する態度

著者: 迎豊1

所属機関: 1弘前大学医学部神経精神医学教室

ページ範囲:P.847 - P.856

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 抄録 「自己の病に対する患者の態度」については古典的精神病理学においてほぼ完成された形で論じられている。著者は,Jaspers, K. とともに,「病に対する患者の態度」という臨床的問題を精神病と患者の人格との関連性をめぐる諸問題の一つとしてとらえ,その態度の両極としての「病識の獲得」と「病を了解的に自己のものとすること」についてそれぞれの基本的構成要件を呈示しながら,ある妄想幻覚患者の病歴と「病に対する患者の態度」を紹介し,その態度の意義と成立要因,さらに自己の再構成との関係について検討を試みた。その際,異常体験に関する確信性の動揺現象は体験の現実性ないし実在意識の変化という基本問題に患者を直面せしめたばかりでなく,病に対する客観的態度を可能とした要因でもあることが示唆された。しかし,病を担う患者にとって単に病を洞察するだけの行為は自己矛盾を露呈することに他ならず,自己の再構成を妨害することが確認された。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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