研究と報告
うつ病の治療過程の検討—ロールシャッハテストを中心に
著者:
星野良一1
村田桂子1
船越昭宏1
大原健士郎1
所属機関:
1浜松医科大学精神神経医学教室
ページ範囲:P.945 - P.951
抄録 内因性うつ病の症例25名を入院時,外来初診時から,客観的評価であるHamilton rating scale,主観的評価であるself-rating depression scale,およびロールシャッハテストで追跡し,病相期の臨床像から抑制が前景に出た症例と不安や焦燥が前景に出た症例に分類して,それぞれの病相の時期による変化をロールシャッハテストを中心に検討した。その結果,治療経過上改善を示したものの中でも抑制が前景に出た症例では活発化,不安や焦燥が前景に出た症例では安定化がロールシャッハテスト上に示された。また,抑制が前景に出た症例では,この活発化を肯定的にのみとらえることは問題があり,回復期に客観的評価や主観的評価の上で改善が示されていてもロールシャッハテスト上で不安を反映する指標が出現するという形で落差が示される場合は,一種の危機的状況としてとらえうることが示唆された。