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研究と報告
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抄録 うつ病を退行期に発症した男性不一致一卵性双生児症例について,発達史・生活史の双生児間の比較を中心に報告した。このような研究は双生児は同じ遺伝素質を持つゆえ発病の不一致の原因が広義の環境因の相違に求められるため病前性格の発達,発病状況を含めたうつ病の成立史の解明に貢献しうる。この症例の発病を免れた双生児との比較,分析から,うつ病発端双生児に学童期から感情の表出が大きく対象への一体化傾向が強いこと,青年期意欲が持続しない傾向,メランコリー型性格特徴の萌芽といえる対象への強迫的執着,幻想的一体化傾向などの性格特徴の発達がみられること,長じては職業状況における緊張から対他的配慮の亢進,几帳面,感情表出の抑圧などメランコリー型性格特微をさらに発展させ,父の死などからなる状況的時熟のもとで発病に至ったことなどが明らかにされた。これに加えて小児期の母の受容の不足とその後の性格発達,特に幻想的一体化傾向,対他的配慮の発達について考察を行なった。
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