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第30回日本病跡学会印象記
著者: 福島章1
所属機関: 1上智大学文学部心理学科
ページ範囲:P.1000 - P.1001
文献購入ページに移動たとえば,「病跡学とは」というテーマのシンポジウムが昨年の第28回総会で持たれているが,今回も荻野恒一氏が一般演題の中で「パトグラフィとビオグラフィ」と題する発表を行った。その内容は,パトグラフィをpathos(悲愴,崇高,受難病などの意)を人がいかに受けとめるかという人間的な営みにかかわる学問であって,脳の病などに病と創造を還元する生物学的方向とは区別されるべきであるとする,氏の年来の見解を改めて主張したものである。学会雑誌にたとえれば,これは原著論文というよりは巻頭言や展望論文にあたる発表で,かならずしもオリジナルとはいえないが,それをあえて一般演題の中で繰り返した荻野氏の情熱の背景には,近年多くのパトグラファーが感じているであろう一種の危機意識がうかがわれたのである。
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