文献詳細
特集 精神疾患に対する神経内分泌的アプローチ
うつ病および神経性食思不振症における神経内分泌学的アプローチ—成長ホルモン分泌異常
著者: 前田潔1 千原和夫2
所属機関: 1神戸大学医学部精神神経科 2神戸大学医学部第三内科
ページ範囲:P.47 - P.57
文献概要
成長ホルモン(GH)は,その血中の微量測定が最も早く可能となった下垂体ホルモンで,1960年代なかばにはRadioimmunoassay(RIA)が一般的に行なわれるようになった。精神内分泌の領域でもMuellerらの報告39)が1969年にみられている。早くからRIAが可能になったため,最も知見が集積されているホルモンといえる。本特集でもみられるように神経内分泌学的な研究の対象となっている疾患はほとんど躁うつ病,神経性食思不振症(AN),非定型精神病であるが,GHの場合もうつ病における分泌動態が最もよく研究されている。ANは種々の内分泌異常を伴うが,gonadotropinsとともにGH分泌も高い頻度で異常がみられ研究の対象となっている。
ここではうつ病およびANのGH分泌異常について述べることとする。
近年精神内分泌と称せられる領域の研究が盛んに行なわれているが,これは精神疾患患老の脳内過程,特に神経伝達物質の異常が下垂体ホルモン分泌に反映していると考え,下垂体ホルモンの動態を脳内をのぞきみる"窓"と考えられているからである。その方向は精神疾患の病態生理を解明するとともに,更に診断や治療,予後の判定にまでおしひろげようとするものである。
精神疾患,特にうつ病におけるGH分泌異常については,比較的最近にいくつかのすぐれた総説4,15)が著わされているし,本誌にも1980年に高橋46)が詳細なreviewを行なっているので,できるだけそれらと重複しない部分について触れることとする。
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