研究と報告
抗精神病薬による起立性低血圧症に対するdihydroergotamineの昇圧効果と効果判定上の問題点
著者:
丸山徹1
有田真2
高柴哲次郎3
佐々木勇之進3
所属機関:
1九州大学医学部第一内科
2大分医科大学医学都生理学
3恵愛会福間病院
ページ範囲:P.87 - P.93
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抄録 抗精神病薬の副作用と考えられる起立性低血圧症患者に対し,dihydroergotamine(DHE)を1日6mg,分三で6週間投与し,その前後における血圧,心電図,指尖容積脈波の変化を観察した。血圧測定と心電図,脈波記録を循環器検査室に呼んで行った18名の患者群(年齢41.0±2.2歳)では,DHEは臥位,立位(10分)の血圧ともに変化を与えず,また心電図T波の起立時減高にも影響を及ぼさなかった。またDHEにより臥位における指尖容積脈波の縮期峰は増高したが,切痕指数には変化がなかった。一方,病棟に医師が出向き,患者の不安,緊張が少ないと考えられる状況で血圧測定のみを施行した9名の患者群(平均年齢49.5±4.4歳)では,DHE投与3週目から起立による血圧下降の程度が有意に減少した。また両群で自覚症のあるもののうち,90%以上の例でめまい,立ちくらみ等の症状が改善した。
精神科領域においてDHEのごとき穏和な昇圧剤の効果を検討するには,血圧を測定する患者環境が極めて重要であり,不安・緊張の存在が薬効の判定に重大な支障を及ぼす可能性が示唆された。