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文献詳細

雑誌文献

精神医学26巻2号

1984年02月発行

文献概要

特集 DSM-III—その有用性と問題点

DSM-I〜IIIの変遷の歴史

著者: 加藤正明1

所属機関: 1東京医科大学精神神経科

ページ範囲:P.114 - P.119

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I.はじめに
 アメリカ精神医学会が初めて「精神障害の診断・統計の手引きDiagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders」の第1版,いわゆるDSM-Iを決めたのは1952年のことであった。その4年前にWHOの第6回国際疾病分類ICD-6が出されていたが,このICD-6とDSM-Iとは全く無関係であった。アメリカの厚生省が国際的な分類体系が必要だと思ったのはそのあとのことで,ICD-8がつくられたのが1966年,施行されたのが1968年で,このICD-8の作製には積極的にアメリカの代表をWHOのICD改訂委員会に送りこんでいる。
 従ってDSM-IIが同年の1968年7月1日に正式に採用されたのは,ICD-8を基盤にするという考えに基づいており,その作製にあたってアメリカの意見がかなり充分に述べられているといってよい。
 だがこのICD-8に対してイギリスからすでに1965年以前に批判が起こり,WHOは12カ国から委員を任命してICD-9に向けて毎年検討することになった。筆者もその1人に選ばれたが,1973年まで毎年各国で順に各疾患の診断・分類会議が開かれ,日本では薬物依存と人格障害の診断会議を1971年に行った。この委員会にはアメリカも積極的で,E. M. Gruenbergを委員長とする「命名と統計委員会」から代表として,J. EwaltやM. Kramerを送って討議した.
 DSM-1はICDと無関係であったが,DSM-IIはICD-8と,DSM-IIIはICD-9と近密な関係をもっているのはそのためである。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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