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文献詳細

雑誌文献

精神医学26巻2号

1984年02月発行

文献概要

特集 DSM-III—その有用性と問題点

精神分裂病—ICD-9とDSM-III

著者: 中根允文1 太田保之1 荒木憲一1

所属機関: 1長崎大学医学部精神神経科

ページ範囲:P.121 - P.128

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I.はじめに
 精神分裂病(以下,分裂病と略記する)に限らず,精神科領域のほとんどの疾患に関する診断は,面接時に確認された症状のみに基づいてなされているのではなく,それらの症状の発現起点からの推移を生活史のなかに読みとり,また,病前性格,病前の社会適応度,家族内遺伝負因,発病前情況,発病誘発因子の関与の有無など,全体的な時間的経過軸のなかで考慮し,多元的に行なわれているのが一般的である。普遍的な診断がなされるには,科学的に立証された操作的診断基準の確立が必要であるが,決定的な生物学的診断根拠を欠く分裂病の場合,同一あるいは類似した経過をたどる一群の患者群から抽出された臨床症状のみに基づかざるを得ないという制約の上に成り立った診断基準に準拠しているという現実が,さらに臨床診断の混乱をまねいているといえよう。分裂病の診断基準,そしてそれらに含まれる症状の評価法あるいは分類方法,および症状把握手技の確立をめざし,これまで多くの試案が開発され,追試検討されてきているが,それらの診断基準に関しては,既に詳細に報告してきたので16),ここでは省略する。
 本論文では,国際疾病分類第9版(ICD-9)26)の診断分類によって分裂病と診断された症例に対し,Diagnostic and Statistic Manual of Mental Disorders, Third Edition(DSM-III)1)の診断基準に従って再分類をした際,起こりうる実際的な問題点に焦点をあてて検討を加えたい。本来,このような作業は,具体的症例を呈示して行なうべきであると考えるが,それは別の機会に報告するとし,今回は統計的検討を述べるにとどめたい。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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