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雑誌詳細

文献概要

特集 DSM-III—その有用性と問題点

小児の精神障害

著者: 栗田広1

所属機関: 1東京大学医学部精神医学教室

ページ範囲:P.145 - P.152

I.はじめに
 DSM-III1,注)は“通常,幼児期,小児期あるいは思春期に初発する精神障害(mental disorder)”を,新設されたカテゴリーを含め,その他の多くの精神障害のカテゴリーに先だって取り上げ,これらの障害の分類については大きな比重をおいている。DSM-IIIはこの他にも,主として成人に認められる精神障害であっても,その診断基準に合致する状態が小児に存在すれば,その診断を適用するということを明確にしている。この2つの原則によって,DSM-IIIにおける小児,児童の精神障害の分類は,従来の成人で成立してきた診断分類,疾患分類を準用してきたといわざるを得ない,児童精神医学における診断分類の不十分さを,ある程度克服したものとなった。
 しかしこれが最終的なものではなく,また日本と米国の社会文化的な背景の違いなどもあって,わが国で実際に使用してみると,いくつかの問題点を認めることができる。それらは,ほぼ以下の2つの次元に分けて考えることができる。すなわち,第1にはDSM-IIIのとっている多軸診断,操作的診断基準の設定などに関する問題で,いわばDSM-IIIの構造に関わるものであり,第2にはDSM-IIIで設定されたAxis IおよびAxis IIの各障害(disorder)のカテゴリーそのものに関わる問題である。
 以下にそれらを著者の経験をとおして述べてみたい。

掲載雑誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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