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雑誌詳細

文献概要

特集 DSM-III—その有用性と問題点

「ICD-10」をめぐる動き—Functional Psychosis

著者: 高橋良1

所属機関: 1東京医科歯科大学医学部神経精神科

ページ範囲:P.171 - P.174

I.はじめに
 1975年にICD-9が発効されるまでには1965年から1972年まで毎年WHOの診断セミナーが行われ,その国際的な共同研究の結果が60カ国以上の国々からの精神衛生専門家の批判を経るという過程があった。1970年代には精神衛生の理論と応用,精神医学の実践が進歩し,なかでも疫学的研究,臨床的研究と神経科学・生物学的研究が進むとともに,第3世界における精神衛生ケアと精神医学研究のモデルが重視されてきた。このような状況で精神障害に対して多様なレベルからの適切な分類が必要となってきた。ICDは世界80カ国以上で公式に採用されている一方で,フランスなど各国でもその国自身の精神障害の診断分類が開発され,第三世界でもその実状に合うICDを要求する声も大きくなってきた。ICDに対しては1980年に米国精神医学会で採用されたDSM-IIIの影響も大きなものとなった。以上の理由によって,1980年代は精神障害の分類と診断にとって重要な時代であり,今日までの前提を根本的に考え直す必要があるとして,WHOは新しいICDを近き将来作成するための活動を開始した。その現れが1980年より始められた「精神障害とアルコール,薬物関連問題の診断と分類の国際プログラム」というプロジェクトであり,WHOと米国のADAMHA(Alcohol, Drug Abuse and MentalHealth Administration)の協力によって3段階に亘って遂行されつある。その第1段階は1980年から1981年にかけての準備作業であり,第2段階が1982年4月開催された国際会議である。その結果をとり入れた共同地域研究が第3段階であり,進行中のものである。このプログラムの目的は精神衛生の分野の診断と分類の現状を再調査し,現在の分類体系にみられる欠陥を確認するとともに,国際的又は国内の共同研究によって解決をはかること,そのために優先的な目標と研究方法および協同研究のあり方をきめることなどである。ここでは1982年4月の国際会議までの「機能性精神病」の診断と分類にかわるWHO活動のうち筆者が興味をもった点を粗描することにする。これはWHOの世界各国の専門家からなるadvisory groupの2回に亘る報告とscientificworking groupの報告及び1982年4月の上記の国際会議の報告によるものである。

掲載雑誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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